映画『ミスト』感想レビュー:鬱になる映画としては好き

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ある日、突然街に霧が立ち込めて、その霧の中から異形の怪物が現れる――映画『ミスト』はそんな典型的なパニックホラー映画の王道的展開の序盤でユーザーを惹きつけて、中盤では閉鎖空間でパニックに陥った人間の醜さを描き、最後にはどうしようもない理不尽な結末に着地する。

そんな鬱になる映画です。

ネタバレ有りのレビューになるので、注意して下さい。


序盤はミステリアスな緊張感と恐怖感がたまらない

映画の始まりはパニックホラーの王道的な展開で、テンポよく進みます。
嵐で木が倒れ、気の合わない隣人とスーパーマーケットに行ったところで、突然霧が立ち込めて、得体の知れない何かに襲われた人が店の中に飛び込んでくる――。退屈になりがちな序盤をテンポ良く展開し、すぐさま謎の霧と怪物の登場、そして主人公と隣人の対立、スーパーマーケットに広がる混乱などを描き、スピーディーに状況を固めていきます。

序盤は登場人物が多いにも関わらず、それぞれの立ち位置がハッキリしているのと、派閥の対立が分かりやすいので観客は混乱することなく映画に入れると思います。

しかし、こういっては何ですが登場人物はバカばっかりです。

何というか、主人公が主人公補正も含め理性的な立ち位置で目立っているからこそ、他の登場人物の行動がことごとくバカにしか映らないのです。

例えば、怪物が窓から入ってきた時、ライトを消せといってるのにつけちゃうバカ、松明で攻撃しようとしてるのに全然火がつかないバカ、あげくのはてに油をばらまいて籠城しているスーパーを燃やすバカ、もう全体的に使えない人間の集まりにしか見えません。一人くらい優秀な奴がいてもいいだろう、と思うのですが、優秀なスーパーマンがいないからこそパニック映画として楽しいのですが。

しかし、どいつもこいつも、やることなすこと全て裏目に出ています。
主人公チーム以外は事態を悪化させる奴らばかり。

人はパニックに陥ると狂うということ

この映画は序盤から悪役として「これは神の怒り。生贄が必要」とか電波をまき散らす宗教女が出てくるのですが、悲惨な出来事が起こり、登場人物達が絶望的状況に追い詰められれば追い詰められるほど宗教女の言っていることが本当ではないか? と思うようになっていくのは上手いなぁと思いました。

いや、正しいというよりも「藁にもすがる思い」というか、何も信じられなくなった時、人間はこういった自信満々の意見というか、自分の意志を曲げない人間を信じてしまうんだなぁという心理がよく分かりました。絶望的な状況では極論を言うリーダーが指示されると言われていますが、確かに「他の奴らとは違う」という人間を信じてしまいがちですね。死が接近しているのならなおさら。

しかし、この映画の序盤から中盤は見事なまでにパニック映画の王道を突っ走っています。
丁寧に死亡フラグを立てて死ににいく隣人やナイスガイ、なぜかサバイバル技能に長けたジジイ、パニックになった連中が人を殺すなど、おおむね「こうなるんだろうなぁ」という予想通りに進みます。

しかし、宗教女を殺したシーンは、ちょっと驚きました。
てっきり主人公チームがスーパーマーケットから脱出したあとに怪物に殺されて「ざまぁw」となるのかとおもいきや、主人公チームで銃の腕が一番のハゲが殺すとは。そしてリーダーを失った群衆はあっという間に弱体化しましたね。やはり銃社会のアメリカでは銃が最強か。弾は十発しかないんだから群衆全員でかかれば勝てるだろ、と思いましたが、リーダーが死んだ瞬間、統率力を失うあたり烏合の衆だなぁと。

衝撃の結末というより鬱エンド

さて、映画の結末は『車でガス欠になるまで走り続けて、主人公が息子含む主人公チームを銃で殺害(心中)したところで軍の救助隊が来る』というもの。

もう少し待っておけば全員助かったのにね、というオチ。
私は結構悪趣味なので、息子を殺して発狂している主人公を見てニヤニヤしてしまいました。そして「さあ怪物ども俺を殺せ!カモーン!」と叫んでる主人公のもとに現れる戦車と軍隊の群れ。

やっちまったなぁ!

まあ主人公は妻が死んでたところで絶望してましたし、この結末はしょうがないと思います。
弾がないのに自分を撃とうとするシーンなど、このミストという映画は本当に細かいところにこだわっていてリアルだなぁ。

下手に救われるよりも、こういう鬱エンドにしたほうが他のパニック映画と差別化できますし、私は好きです。

人間関係を観る映画

この映画は人間関係を楽しむ映画だと思いました。
単純な憎しみや嫉妬というよりも、人間を信じられるか否かという根本的なテーマで動いていたと思います。

主人公が「放っておいたら宗教女が最大派閥になる」と言い当てていたのは凄い。
主人公は結構、人間の行動について勘が鋭いですね。ただ、主人公も仲間を見捨てないというか、怪我をした人でも無茶して助けようとするので「中途半端にお人好し野郎」なところが短所です。
それでも宗教女を撃ち殺したハゲが「人を殺してしまった」といった時に「おかげで助かった」と言っていたので、最後はもう吹っ切れていたと思います。

このミストという映画、所々で「人間は生まれながらにして善よ」とか「僕を怪物の餌にしないって約束して」など伏線やテーマとなる意見が散りばめられていて、展開は王道ですが観ていて飽きなかったです。
名作とはいいませんが、佳作かなといった感じ。
B級かとおもいきやテーマは絞って深く掘り下げてるなぁと。

しかし、私はこの映画の見所は「パニック時に役に立たないバカな人間ども」だと思います。
何だかんだいってミストは人間がいかに愚かな行動をとるかということをリアルに描いています。失笑しながら観るのはなかなか愉快です。

というわけで、性格の悪い人にオススメの映画でした。




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