大学のマンガ学科の就職事情について。漫画家になれない=無職という訳では無さそう

最近は大学の芸術学部にマンガ学科を設立する場所が増えてきた。

「マンガ学科って要するに専門学校でしょ?」

と思うなかれ。
何と四年制の大学でマンガ学科を持っている大学が、近年かなり増えてきているのだ。
ウィキペディアを見れば「こんなにあるの!?」と驚くだろう。

京都精華大学 マンガ学部 マンガ学科・マンガプロデュース学科

明治大学 国際日本学部 国際日本学研究科

学習院大学 大学院 人文科学研究科 身体表象文化学専攻

神戸芸術工科大学 先端芸術学部 まんが表現学科

創造学園大学 創造芸術学部 芸術学科 漫画・アニメ・声優コース

大阪芸術大学 芸術学部 キャラクター造形学科 漫画コース

さすがに全部を羅列すると多いので、一部抜粋にしておいた。

クールジャパンで漫画が取り上げられているとはいえ、大学の専門コースにまでなっているとは驚きだ。しかし、問題はマンガ学科を卒業して漫画家になれるのか? もし漫画家になれなかったら既卒無職になってしまうのか?

という『リスク』の問題だろう。

結論から言うと、漫画家になれなくても、大学であるがゆえにイラストレーターや広告業界、他業種に就職することは可能だ。

ただし『漫画家を諦める』という前提条件が必要という問題点がある。
マンガ学科の現状と将来性について詳しく見ていこう。


漫画の技術を学ぶには良い環境

マンガ学科というだけあって、授業はデッサンから脚本技術、果ては大手出版社の編集者のアドバイスなど、とても充実している。マンガ学科にいる学生も、もちろん漫画好きなので、友達には不自由しないだろうし、ライバル同士、切磋琢磨して技術を磨くには良い環境だ。

モチベーション論の中に、ライバルや同じ志を持った人間が近くにいると、モチベーションの維持がしやすいという研究結果がある。もちろん、元々やる気の無い人間にとっては意味を成さないが、本気で漫画の技術を身につけたいと思っている若者にはうってつけの学科と言える。

専門学校に比べて四年間と卒業までの猶予が長く、途中で「やっぱりサラリーマンとして働こう」と思っても修正可能だ。専門学校とは違い、学歴も大卒になるため、進路を変えた時の選択肢は大学のマンガ学科の方が強いだろう。
もちろん、学費は四年分なので大学の方が高くつく。しかし、リスク分散という面では、マンガ学科が圧勝しているのは明白だ。

連載を持てる人間は卒業生でも一握り

しかし、当然だが漫画やイラストレーターの世界は超実力主義だ。
日々の努力は当然として、その中でも才能に秀でた人間しか漫画家として生き残ることは出来ない。現在まで、各マンガ学科の卒業生で『雑誌デビュー』までいっている生徒は多いが『雑誌連載』『単行本出版』までいった卒業生は少ない。

また、いくら技術を教えてくれるとはいえ、制作や持ち込みなど自主的に学習する姿勢がなければ、趣味が同じ物同士で馴れ合うだけの、意味のない学生生活になってしまうだろう。

実際、アニメ系の専門学校同様、同じ趣味を持つもの同士で馴れ合うばかりで技術を磨く努力を怠り、結果として漫画家にもイラストレーターにもなれない場合が多い。

これは語学留学にいって日本人ばかりとつるみ、結局、英語が喋れないまま帰国するのに似ている。

どんなに環境が素晴らしくても、本人のやる気がなければプロデビューなんて夢のまた夢なのだ。

広告業界などに就職もできるが、プライドの問題

マンガ学科の就職先としては広告業界やデザイン会社など、漫画家以外の道も用意されている。
しかし、これまで大学のマンガ学科の利点をたくさんあげたが、実はそれらの利点こそがデメリットにもなり得る。

漫画家としての成功を目指すには、相当な努力と積み重ねが必要だ。そのためには時間が必要だし、小説家のように兼業で目指せるような仕事ではない。すなわち、漫画家を目指すということは、自分の腕に人生をかける、一か八かのバクチである。

大卒という保険を作ることによって、妥協するきっかけになってしまう可能性も否めない。
漫画家は27歳、30歳などで花開くこともあるが、就職はそうはいかない。30歳を超えれば職歴なしの場合、就職は難しいだろう。
イラストの仕事も、技術が伴っていなければ食っていくのは困難だ。汚れ仕事でも何でもやるという気合があるなら、仕事はあるが、やはり技術は必要不可欠である。

漫画家になると決意して、安易に学校に通うのは危険だ。
学校はあくまで環境を用意するだけで、デビューのチャンス、生き残れる技術までは与えてくれない。

漫画家になるというバクチと大学という保険は、相容れない存在なのかもしれない。しかし、同じ志、ライバルを持った者と出会う良い機会にはなるので、漫画家への想いが強いならマンガ学科への受験を考えるのも良いだろう。

イラストレーターを目指す進路を考察した過去記事も参考になると思うので、貼っておきます。hazimetetensyoku.hatenablog.com







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